b型肝炎ウイルスの感染後の経路を遺伝子型で予測

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b型肝炎ウイルスには現在、世界中でみて8種類の遺伝子型があり、さらに地域特異性による細分化がなされています。b型肝炎ウイルスの遺伝子型を調べることで、感染後にどんな病気の経過をたどるのかを大方、検討することが可能です。

ここでは、b型肝炎ウイルスの遺伝子型、それぞれの特徴などについて詳しく紹介しています。

日本国内では3種類が確認されている

血液検査による肝炎ウイルス検査でウイルスマーカーを調べ、HBs抗原というb型肝炎ウイルスの表面にあるたんぱく質が陽性となれば、活動性、非活動性の有無は別として、b型肝炎ウイルス感染しているということになります。

このb型肝炎ウイルスには8種類の遺伝子型・ゲノタイプが存在していて、それにより症状のあらわれ方、今後どのように病気が進行していくのかなどをある程度予測することが可能です。b型肝炎ウイルスには、AからHまでのゲノタイプがありますが、日本国内ではAからCまでの3タイプが今までに確認されています。

それぞれの遺伝子型の違いは、遺伝子を構成する塩基配列を示しており、8パーセント以上異なる場合に、異なるゲノタイプと分類されています。最初は1つの遺伝子だったものが、長い時を経て変異を起こし、枝分かれしてきたのです。

この遺伝子型の分類には、地理的、人種的な偏りがかなりあることがわかっています。そのため、8種のゲノタイプのうち3種のみが国内で確認されているのです。

一般的に、日本国内を含むアジア地域に多いのは、ゲノタイプB・Cです。ゲノタイプBは、日本国内のb型肝炎ウイルス感染者全体の約10パーセント程度で、北日本と沖縄が多く、沖縄にいたっては6割がこのタイプです。

残りの90パーセント近くが、ゲノタイプCとなるので、国内では圧倒的にゲノタイプCが優勢です。

ちなみに、お隣の国、韓国ではほぼ100パーセント、ゲノタイプCを持っています。歴史的背景を考えると、日本に最初に住み始めた先住民は、ゲノタイプBを持っており、その後、ゲノタイプCを持った朝鮮半島から移住してきた民族が住み着いたことにより、現在の分布になったと考えられています。

ゲノタイプB・Cの特徴は

臨床的観点からゲノタイプB・Cを見ていくと、日本古来のこのタイプは、基本的に慢性化しないウイルスとされています。ゲノタイプBにいたっては、ウイルスが遺伝子変異を起こして、HBe抗原が消失し、HBe抗体ができるいわゆるセロコンバージョンを若年期に高確率で引き起こすことが分かっています。

このケースは、その後、非活動性キャリアに変化するのが一般的です。また、b型肝炎ウイルス感染後の最終像である、肝がんに関しても、その発症リスクは低く、仮に発症しても平均で70歳代と高齢になってからです。そのため、ゲノタイプBの場合、感染後の予後は比較的、良好とされています。

ところが、台湾などでは、若年層の肝がんはゲノタイプBに多いことがわかっています。そこで明らかになったのが、ゲノタイプBには、日本型とアジア型の2種類が存在するということです。日本型のbjに関しては、ほとんどが無症候性キャリアとして終止し、肝がんまで進行するリスクは非常に低いとされています。

ただし、外国人との性交渉などにより、変異株に感染してしまうと劇症肝炎の原因になるので注意が必要です。

一方、ゲノタイプCは、平均で50代で肝がんを発症しており、ゲノタイプBに比べると非常に肝細胞がんのリスクが高いです。感染してから肝硬変や肝がんに至るまでの進行が急速で、従来型のインターフェロン療法は抵抗性があるため治療が難しいとされています。

急増中のゲノタイプA

日本国内では最も少ないのですが、急増しているのがゲノタイプAです。世界的には最も感染者が多いタイプですが、従来、日本では見られませんでした。しかし、現在、このタイプの急性肝炎が増えています。どうして日本国内に増え始めているのかというと、いわゆる若年層での水平感染です。

もともとゲノタイプAはアフリカを中心に、インド、フィリピン、ヨーロッパや移民大国のアメリカに多いタイプになります。水平感染というのは、異性間や同性間による性交渉も含まれていて、外国人との危険な状態での性交渉が主な感染原因です。

b型肝炎ウイルスに感染し、急性肝炎を引き起こした人の2割から3割がこのゲノタイプAをもつウイルスにより引き起こされています。

慢性化のリスクが高い

ゲノタイプAは、いわゆる日本人からみれば外来種のようなものです。日本古来のゲノタイプB・Cに関しては、慢性化のリスクはほとんどなく、大人がb型肝炎ウイルスに感染し、急性肝炎を発症しても後腐れなく治ってしまいます。

しかし、ゲノタイプAでは、急性肝炎のうちおよそ10パーセントが慢性化します。そして、肝硬変へと移行していくのです。ゲノタイプAにも欧米型、アジア・アフリカ型があることがわかっており、このうちアジア・アフリカ型は肝がんの発症率が高いとされています。

ただし、ゲノタイプAに関しては、ゲノタイプBやCと比べて新しいタイプのインターフェロン療法であるペグインターフェロンが非常に有効とされており、治療も1年程度ですみます。必要に応じて経過を見ながら治療を行っていくことが大事です。

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リスクを高める外来種を増やさないために

近年、ゲノタイプAが増えてきたように、日本国内では外国人観光客の急増やグローバル化により、外国人と接触する機会は確実に増えています。多民族国家であるアメリカに8種のゲノタイプが存在しているように、日本でも、今後、ゲノタイプAのさらなる増加に加え、新たなタイプが存在する可能性も十分にあります。

もとより、b型肝炎ウイルスの感染力は、ほかのウイルスと比べて強く、それはHIVウイルスの感染力よりも強いのです。しかし、HIV同様に避妊具を適切に使用することにより、性交渉による水平感染を防ぐことができます。

日本では今のところみられない、欧米に多いゲノタイプDや南アフリカに多いゲノタイプEは、肝がんの発症率が高いですし、南米に存在するゲノタイプFは、デルタ型肝炎ウイルスとの共感染で劇症肝炎を引き起こすなど、予後の不良のケースが非常に多いです。

こうしたことからも感染を未然に防ぐこと、国内にあらたな遺伝子型を増やさないことが非常に重要です。